スタッフより

 

この会は、2010年を最後に、一度解散をしました。それは、私自身がとても疲れてしまったということがあります。私は、薬害エイズ訴訟、薬害肝炎訴訟を見て、「ああいう形で自分たちも救済されたい」と思って会を発足させました。

 

弁護士さんと相談し、病院相手の訴訟の方が好ましいということで、まずは病院相手に訴訟しました。一部勝訴と言いながら、まったく納得のいく結果は出ませんでした。また、高裁の判決文の中にも、正直、裁判官の暴言とも言える文章もありました。1番頭にきたのは、「代償性発汗は、タオルを巻いて対処できる」という内容の言葉です。

これには、私は、裁判官に対して正直、「自分と同じ体になってほしい」と思うぐらいの怒りを覚えました。1度汗が出るとずっと手続けて止まらず、対処なんてできません。対処できるようであれば、訴訟なんて提起しませんし、ETSを受けたせいでの自殺者なんて出ません。逆に、「汗の対処のために、体にタオルをグルグル巻かなければいけない体ってどんな体?」って感じです。タオルをグルグルと巻かなければ汗に対処できない体になるのであれば、誰も手術など受けません。そんな体にして欲しくて手術を受ける人など誰もいません。こんなひどい言葉浴びせかける裁判官に強い怒りを覚えると同時に、被害者を更にどん底の苦しみに陥れたということで、不服を申し上げます。

また、裁判所や裁判官によっても判決は様々で、最高裁までいっても敗訴してしまった方もいらっしゃいますし、一審敗訴した後に、高裁では和解に終わったという方もいらっしゃいます。敗訴判決に対しては、到底容認できません。何でこんなひどい体にされながら、敗訴なのでしょうか? 私ちは、何も情報も与えられず、医師に良いことばかり言われ、手術も受けてしまったのです。私が手術を受けた際には、既に、スウェーデンなどでは大規模な被害者の会も存在しいていて、アメリカや台湾でも被害の報告があります。ETSはスウェーデンから習った施術であると言われています。医師が、スウェーデンの患者の状況を知らないわけがありません。特に、私の受けた病院では、医師自身も、論文に後悔している人がいることを書いていますが、肝心の手術前に患者に配られた冊子には、「後悔している患者がいる」ということが書かれておらず、「顔から汗が出なくても大丈夫。手術を受けて化粧ののりが良くなった」など良いことばかり書かれています。また、代償性発汗については、「人間の体温調節にとって必要だから出る」という趣旨のことが書かれています。

実際には、胸から上が汗が出なくなって熱がこもり、胸から下がバケツで水をぶっかけられたくらいの汗が出てしまいます。それで、海外では、スプリットボディ症候群(分断された体)(日本では、ETS症)と呼ばれていたりします。

 

私も一審では、裁判官から和解を提案されましたが、到底納得のいく和解ではなかったので、それを蹴って、判決となり、最高裁までいきました。

私より後の時期に手術を受けて、私と同じ病院に提訴しながら、敗訴してしまった方もいて、それには到底納得がいきません。

 

山本クリニックの山本医師は、和解して賠償金を支払っているにも関わらず、手術の説明会の時に、「訴訟したけど、勝った」と嘘を言っていた時期もあったということです。

和解した方も他に何人かいるようですが、私の方で全部は把握できていません。私が紹介した弁護士さんで、和解したり、一部勝訴、敗訴など様々な結果となっております。

私が会をやめてしまったというのもありますが、その後の結果ぐらいは教えていただけたら、幸いです。

だから、和解してフェードアウトとならず、訴訟した意義が残るよう、マスコミで取り上げてもらったりしたいので、会の入会の際に、「裁判の結果についての問い合わせに同意する」ということを条件にしているわけです。

私の訴訟の判決の際、毎日新聞で取り上げていただいて、ヤフーのトップニュースとなりました。その際には、この会にもたくさんの方から入会希望がありました。

 

とにかく、ETS被害者が救済されるよう願っておりましたが、自分の力不足を毎日のように感じ、なかなか救済されない現状に焦りを覚えておりました。また、ETS被害者というのは、交感神経を切るとやる気までとられるようで、なかなか被害者で立ち上がろうという気のある方も少なかったりで、私の方で意識改革を唱え続けることに疲れてしまいました。また、私が会をやめても、私より力のある誰かが新たな被害者の会をやってくれる人が現れるかもしれないと思っていたりしました。

 

あるテレビを見ていたら、イギリスの話しなのですが、幼い頃、義父に虐待されてPTSDになり、しかし、成長して法律を勉強してから、訴えられることに気づき、イギリスは時効がないので、訴えて、義父に刑事罰を与えることができたという話しがありました。

 (なお、日本では、刑事ではなく民事の話しになりますが、人の生命又は身体が侵害された場合の債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効については、客観的起算点からの時効期間が20年間に延長されました(民法167条)。今まで10年の壁で訴訟を断念していた方もできる可能性があります。)

 

それを見て、私は、「自分と同じだ」と思いました。私は、ETSを受けてから、ある資格が欲しくて、法律を勉強し特に民法を勉強するうちに、「ETSは訴訟しなければいけない案件だ」と思うようになりました。

 

私は、その法律系の資格は、体調不良などにより、思うように勉強ができず、資格はとれていませんが、法律を勉強できたことはとても人生の役に立っております。

 

何の資格のようなものもなく、法律を語ることは嫌だったので、あまり法律的なことは言いませんでしたが、一応別の法律系の資格は持っています。

 

法律を勉強しているうちに、民法709条「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」という条文があり、それによって、私は損害を与えられたのだから、賠償される権利があるという思いになりました。法律を勉強して、世界が変わり、常にそういう法律的な考えで動くようになったのではないかと思います。だから、学校教育でも、最低限の法律は勉強されるべきだなどと考えてしまったりします。

 

また、刑法を勉強していて、「積極的に騙すのも詐欺罪に当たるが、言わないことも詐欺罪に当たる」と習い、ETSの場合、医師が患者が苦しむかもしれないことをわかっていて、それを黙っていて受けさせたわけだから、「詐欺罪に当たるのでは?」と思ったりしました。

 

私が受けた法律系の試験は7月という夏に試験があるため、今は節電とかで28度設定にされてしまうので、「何とか温度を下げてもらえませんか?」とお願いしましたが、断られてしまいました。その日は点の恵みか、それでも曇っていて、いつもの日よりは気温が低く、本当に助かりましたが、なりふりかまわない格好で試験を受けざるをえませんでした。ETS被害者というのは、試験そのものを受ける環境によって著しく左右されてしまうので、本当に大変です。例えば、就職面接でも、試験そのものの心配よりも、まずは暑くないかなど、気温の心配をしなければならないのです。

 

また、私が会を解散させてしまったのには、被害者の方々とのやりとりに疲れてしまったというのもあります。

私自身も同じ弱い一被害者であります。一方的に「会が何かをしてくれる」と期待されても困ります。こちらは同じ被害者に何かをやってあげなければならない義務もありません。同じ被害者に期待されすぎて八つ当たりされたり、時には怖い思いをしたこともあります。被害者同士、立場は常に対等であります。同じ被害者同士思いやりを持って接することが大切だと思います。

 

基本的には、手の汗を気にしてしまって手術を受けてしまう方というのは、神経質でおとなしく、素直な方が多いように思います。中には、手の汗のことなど気にせず、手術など受けずに普通に生きている方も大勢いるのです。また、インターネットで情報を得て、手術を受けずにすんだという人もたくさんいます。ETS被害者は、インターネットでまだ、情報がなかった頃に手術を受けてしまったという方も多いですし、素直だからこそ医師に騙されやすいという弊害もあったりします。また、インターネットもやっておらず、おとなしくて医師に苦情さえ言えず、1人で苦しんでいる被害者の方も大勢いると思います。手術を受けてしまった人というのは、「医師がまさか患者を騙すわけがない」という気持ちを持っているのです。医師と患者というのは、信頼関係の元になりたっているので、患者は医師の言葉を鵜呑みにしてしまいがちです。

ETS被害者の方の多くが穏やかでおとなしい性格である一方、ETSを受けてしまったせいで性格が変わってしまったというのもあるかもしれませんが、私を困らせる人というのも残念ながらいました。
 

公共の利益になることであれば、名誉棄損には当たらないということですので、敢えて名前を出させていただきますが、この会を敵として、渋谷にあるETS専門病院の山本英博クリニックの山本医師が、ETS被害者を使って嫌がらせをしてきました。

 

その被害者は、山本医師が行うリバーサルと名のつく手術で体が治ると信じていました。

 

山本医師は、その被害者に、「ETS被害者連絡会があるからリバーサルはもう行わない」などと言ったということです。しかし、私が会を解散している間に、山本医師は、ETS患者を救ったのでしょうか? 答えは、NO(ノー)です。

 

私が訴訟を提起した病院で受けた人のETS被害も多かったですが、山本クリニックの場合は、二重被害にあってしまった方もいました。

 

山本医師から、「下位の交感神経を切除すれば汗が減る」と言われ、再手術を受け、汗はひどくなるし、顔が余計熱るようになったり、お金をとられた上に、二重被害にあってしまったのです。

 

しかし、ある時、テレビを見ていたら、ETSの宣伝番組をやっていて、しかも、その番組では、「ETSは副作用もない」などと放映されておりました。こともあろうに山本医師が出演していました。山本医師は、ETSで生計を立てているので、人体実験やお金のために、どんどんETSをやりたいだろうとは思います。しかし、その結果、被害者は今も出続けております。

 

 

ETS被害者の方が言っていた言葉の中で印象的な、私が上手く気持ちを言い表していると思った言葉が、「ETSに向き合うのも向き合わないのも辛い」という言葉です。私もETSに向き合うのは辛いです。ETSのことを忘れられればいいですが、24時間、ETSを受けた体で、この瞬間にも頭部や首の後ろ、背中に熱がこもりだるくて、いつも気温と汗のこと、そのための服装、着替えなど持ち物を気にして、生きていかなければならず、忘れることなど不可能なのです。

 

ずっと、リーダーシップのある社会的地位もあるような方やそういった方で、お子さんがETS被害にあってしまった方などが、会を発足せてやってくれればいいと願っていましたが、そういう方も現れそうにないため、勇気を持って、また会を始めることにしました。

 

ETS被害者の方の中には、被害者でありながら、「なんらかの形で協力します」という他人行儀な言い方をされる方がいたりして、その時の状況にもよりますが、なんだか人ごとっぽく突き放されたように感じる時がありました。「一緒に協力してやっていきたい」という気持ちで会に参加してくださると心強いです。

誰かが訴訟していて、「自分はまだ訴訟していないけれど、他の人の訴訟に協力する」という意味での「協力」というのは、良いと思います。ただ、私自身が一緒に参加してほしいと思った時に、「なんらかの形で協力します」という言葉を使われてしまって、がっかりしたということがありました。

例えば、「国際協力」と言うと、「先進国が発展途上国に援助をすること」などをさしますが、援助する側とされる側があるわけです。

「協力する」という言葉は普通に使う言葉ですが、外側からの協力ではなく、なるべく、一人ひとりが、「自分が当事者として参加する」という意味での「協力」という言葉を多く使うようになると、より良い方向に向かうのではないでしょうか?

 

■実は、被害者の「前向きに」という言葉は好きではない

 

私は、ETSについて手術を受けた病院の医師にETSについて苦情を言った時に、「前向きにならないといけないよ」と言われ、また、違う医師に苦情を言ったら、「前向きにいきましょう」と言われました。それで、「ああ、患者から苦情がきたら、前向きになれって言え」って上の医師から言われているんだなと気づいてしまったのです。ひどい話しです。それ以来、「前向きに」という言葉に、違和感と嫌悪感を感じるようになってしまいました。

 

例えば、交通事故で人をひいた加害者が、後遺症を負った被害者に対し、「その体を受け入れて前向きになりましょう」なんて言えるでしょうか?! 言えるわけがありません。「冗談じゃない。あんたに言われたくない。」って思うのが普通ではないでしょうか? 医師が自分で患者をひどい体にしておいて、「前向きに」なんて言うのはもってのほかです。

 

また、あるテレビを見ていたら、コメンテーターが、「前向きにって言うのは前向きじゃないから言うんです。前向きに生きていたら言う必要はありません」と言ってました。もっともな意見だと思いました。

 

ですので、この会では、「この体を受け入れて明るく前向きに」などという言葉を極力控えていただけると幸いです。ETSを受けたこの体を受け入れられるわけなどないのです。

 

また、うつ病の患者を励ましたりしてはいけないとよく言われていますが、ETSを受けて、うつ病になってしまった方も少なくないので、励ますような言い方をして良いのかどうか、難しいところではあります。お互いに、「この体で大変ですが、なんとかやっていけるとよいですね」程度の言い方の方が良いのかなと個人的には思ったりしています。しかし、この体でも生きていけるよう権利を獲得するには、道のりは決して短くはなく、楽して、国が簡単に権利を与えてくれるわけではないでしょう。でも、大変で面倒だからと言って、何もしないでいる方が私には耐えがたく思えます。この体でも生きていけるよう権利を獲得するために、「がんばっていきましょう」とは言いたいと思います。

 

しかし、そんな中でも、とにかく、被害者同士というのはとても難しいものがあります。

私自身、顔から汗が出ないため、ETS被害者の方の中には、切除部位により、また、片方だけ切った方など様々な方がいて、ある被害者の方に、「顔から汗が出て羨ましい」と言ったところ、「俺が辛くないとでも思っているのか?」と怒鳴られてしまったことがあります。

 

そういったことも以前、私を疲れてしまった原因のひとつだったりします。本来は、医師に向けるべき怒りを私に向けられてしまったこともありました。本当に被害者同士というのは、背景も様々だし、何度も言いますが難しいものがあるのです。私自身も被害者で余裕もないしETS受ける前の自由に行きたいところに行けた爽快で健康な体ではなく、気温を考えて行きたいところにも行けず、どうしても行かなければならない時でも、みんなが暖かい恰好をしている中、自分だけ半袖にしなければならなかったり、たくさんの着替えを持ち歩いたり、制限のある自分の体に絶望と苛立ちを感じています。そういったことも考慮していただけると幸いです。とにかく同じ被害者として、様々な意見があり、時には対立してしまうこともあるかもしれませんが、そんな中でも、権利を獲得するためには、協力して一緒にやっていくしかないと思います。ETSを受けて苦しんでいて、「元の体を返して欲しい」と思っている人であれば同じ被害者です。 

ひどい体にされ、この理不尽極まりない状態で、何もしないというのは良いことだとは思えません。

 

そして、私が再び会を始めるきっかけとなったのは、レーシック難民を救う会(レーシック被害者の会)のホームページを見たからです。彼らは、やはり、被害の状況を公開し、「社会的に公正であり、法的に正しい決着がつくことを望んでおります。」と書いています。私も同じでありたいと思います。あきらめず、一歩一歩やっていくことが必要だとレーシック被害者の方のホームページを見て思いました。今度は、あきらめずにやりたいです。

現在、国会議員で、薬害エイズ訴訟の元原告の川田龍平さんは、国に対して集団訴訟をしている時に、初めて実名を出した方ですが、「何度もくじけそうになりながら、最後までやり通した」ということです。

 

ETSもレーシックも死に関わる病気ではなく、生活の質の向上のために受けた手術です。そういったことで、自殺者を出すなどあってはならないのです。

 

交通事故の場合は制度がきちんとしていて、被害者救済制度が整っていたりしますが、日本では特に医師が保護され、患者が医師に損害を与えられても、患者が救済されていないというのが現状です。そういった医療制度そのものにも疑問をもっていますので、今後は、そういった観点からも、救済を目指していければとも思っています。

 

なお、こちらのホームページだけで、住所や氏名もわからず、不安だという方もいらっしゃると思いますが、ETSを行っている病院の圧力などがすごいため、このホームページには、氏名をだしおらず、匿名でやらせていただいております。このホームページをお読みいただき、信頼できるのかどうか判断していただく他はございません。ただ、今後、会合なども開催したいと考えておりますので、お会いすることもあるかと思います。

 

長い沈黙を破って会を再開させました。賛同してくださる方の入会をお待ちしております。